せかいとことば

世界は言葉によってつくられているし世界は絶えず言葉を生み出しているし。雑多な文章をつらつらと。

あなた、わたしは世界をつくっているのよ。いつだって。

そうだ、あの話をしよう。あの話を。でも、あの話は言葉にしてしまってはすぐに、崩れてしまうかもしれない。だから慎重に話そう。慎重に、あの話をするよ。

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五時になると、時計のチャイムが鳴りだす。それが実際、チャイムなのか、なんなのかはよくわからないのだけど、チャイムが鳴りだす。わたしの王国はそれを聞いて動きだす。せわしなく、ものたちは動きまわる。

六時になると、動きだしたものたちはいちど、止まってしまう。それは、本当にとつぜんに止まってしまう。車の急ブレーキなんかでは全然たりなくって、例えるなら、ストップウォッチを止めたかのように。止まってしまう。

七時になると、止まったものたちはまた、動きだす。けれどもそれは、はじめの動きとは全然ちがったものになっている。わたしはそれが悲しい。悲しいのだけれど、しばらくするとそれにも慣れてしまう。その動きに慣れてしまう。

わたしの王国ではいろいろなものたちが、めまぐるしく動く。いつだって、めまぐるしく動く。それは本当にめまぐるしくってあたまの裏側がぐらぐらとしてしまう。

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ここまで、話したところで気づけば眠りについてしまっていた。時計の針は三時半のあたりをあらわしていた。けれどもそれが夜の三時半なのか、昼の三時半なのかは定かではなかった。
あなたの姿は消えてしまっていた。いやもしかしたら、初めからいなかったのかもしれない。どうかしてる、なんでこんなことも思い出せないのだろう。
視界がぼやけていた。蛇口をひねると冷たい水がぶわあっと出てきて、わたしはそれを、両手で思い切り顔にうちつけた。