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せかいとことば

世界は言葉によってつくられているし世界は絶えず言葉を生み出しているし。雑多な文章をつらつらと。

眠る、そして歩く

 人間ってそもそも欠陥を抱えた生き物なわけ、一日のおよそ三分の一を睡眠に費やさないといけない。人生のおよそ三分の一を何もしていない時間に費やさなければいけない。機械の世界、コンピュータの世界へ行ったら笑われてしまうだろう。そもそもそんな性質を、宿命を生まれながらに誰しもが持っているわけであって、それなのに人生に効率を求めようだなんておかしな話。残りの三分の二は何かをしている時間なのか、意味のある時間なのかというとそれも疑わしい。おおよそ人生のなかで意味のある時間というのはほんの一握り、ほんのちょびっとなわけであって、その瞬間を構成するために莫大な意味のない時間があるのだなあ。そんなことを思うとこうした比較的意味のない時間さえも愛しく思えたり思えなかったりして煙草を吸ったりして気づくと空は明るくなったりしてわたしは眠りについたり、つかなかったり。

 人間は生まれてから今までに見たすべての景色を脳内に記憶している、ということをどこかで聞いたことがある。しかしそのすべてを思い出すことができないのは、記憶を知覚する部位がうまく結びついていないからだ、と。それには幾分か科学的な根拠があるのかもしれないけれど、きっとそうあって欲しいなあと思った人がうまい理屈をつけてそういうことにしたのだろう。だって、これまで見た景色を、出来事を本当に忘れてしまうことがあるのだとしたら、それは悲しいこと。なかったことと同じことになってしまう。だからこそ記憶には残っている、残っているけどうまく思い出すことができないこともあるという説明をつけたのだ。わたしの頭の中には今までに出会ったすべての出来事が記録されている。そんな記憶たちは、わたしが眠っている間に整理され、デフラグされている。一生思い出すことのないような記憶もずっと、片隅に記録されているのだ。その莫大な意味のない記憶たちは、ほんのちょびっとの意味のある大切な瞬間を創り出すために準備をしていると思うとこの布団の中における無駄な時間さえもが意味のある行為のようにも思えたりしてね。