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せかいとことば

世界は言葉によってつくられているし世界は絶えず言葉を生み出しているし。雑多な文章をつらつらと。

「わたしの可愛い小鳥」

 ドラッグストアで買い物をしていた、葛根湯と、水出し緑茶など、そんなものを購入した。レジで会計をしていると、すこし先にポスターが見えた。
「探しています」
大きな文字が見えた。ああ、犬か猫でも、いなくなってしまったのかなあ。可哀想に。見つかるといいなあ。ちょっと探しながら今日は帰ろうか。そんなことを考えて、会計を済ませた。

 商品をバッグに詰めながらポスターを見る。そこには、クレヨンで描かれた鳥の絵があった。わたしはそれを見て、本当に哀しい気持ちになった。本当に哀しい気持ちになったのだ。今ここにわたし一人だったら、泣いてしまいたいくらい。そのくらい哀しい気持ちになった。
 鳥がいなくなってしまった。小さな文鳥だ。文鳥はきっと、窓かドアか、どこからか飛び立ってしまったのだ。自由になった鳥。籠の中から飛び出した鳥。鳥は幸せだったのかな、狭い部屋を飛び出して、自由を手に入れたのかな。ご飯はちゃんと見つけられているのかな。仲間はできたのかな。
 そんなことを思いながら、しかし、哀しい気持ちになった。きっと、彼女は本当に、この小鳥を愛していたの。毎日残業の仕事に疲れて帰ると、小鳥が待っている。扉を開けると小鳥が飛びつく、もしかしたら放し飼いだったのかもしれない。そしたら糞まみれで嫌だなあ。まあそれはいい。
 小鳥。いなくなってしまった、小鳥。彼女は小鳥がきっと帰ってくると信じている。信じて、ポスターを描いている。近くのお店に、片っ端から頼み込んで貼ってもらう。きっと、見つかることを信じて。

 見つかることはないのだ。小鳥が見つかることはないのだ。わたしはそれを一瞬に感じてしまって、そのどうしようもない行き場のない哀しみに、自分を照らしあわせていた。小鳥。かわいい小鳥よ。
 あなたはいまどこかで、きっと楽しい暮らしをしているのだろうね。きっと、楽しい仲間ができたのだろうね。きっと、これまでにないような、自分に出会えたのだろうね。きっと。
 カラスにいじめられたりしていないかなあ。美味しいご飯を見つけられているかなあ。小鳥。わたしのかわいい小鳥。小鳥はいつまでも小鳥のままで、チュンチュンと飛び跳ねて、宙を舞って。