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せかいとことば

世界は言葉によってつくられているし世界は絶えず言葉を生み出しているし。雑多な文章をつらつらと。

死なないようにするということ

「死なないようにする」
 書類の余白に、小さな文字でこう書いてみたのだ。なんだか馬鹿らしい気もするけれど、いまのわたしにとっては、たぶんこれがいちばん、大切なのだと思う。書いて、すぐに消した。
 もし、死んでしまったら。わたしが死んでしまったら、たぶんたくさんの人が悲しむだろう。たくさんの人が悲しむというのはとても悲しいことだ、わたしが死んでしまったら、たくさんの人が悲しむ姿なんて自分としては知覚できない、ってことに近代ではなるのだろうけれども、そういうものを超越してなんだか悲しい気持ちになってしまう気がする。そして自分、自分自身としてはまだまだ世界のことを知らなさすぎるし、これからたくさんの発見や、楽しいことが待ち受けているような気がしてならないし。そんなたくさんの出来事をなくしてしまうのは単純にもったいない。

 とまぁ、そうなんだけど、そうなんだけれど。そんなに大層なことではなくって、とりあえず行動していくための指針、としての「死なないようにする」ということ。生きたいとか、死にたいだとか、そんなことは一切も考えずに、ただ死なないようにしていく。死なないようにするためにはどうしたらいいか、これをいつも考えて動いていくというのは、なんだかとても救われることのような気がするのだ。
 すこしでも、すこしでも、死なないような方向へすすんでいくということ。
 
 死なないようにするために、わたしはそれほど長くはない休憩時間に、外へ出て、近くの公園のベンチに腰掛ける。水着を着て、水遊びをしている小さな男の子がいる。男の子は、水で遊ぶ、というよりも水と遊ぶ、といった感じの水遊びをしている。
 こんなに全力の、全身全霊をかけた水遊びというのは、きっとわたしなんかにはもう到底出来やしないのだろうなあ、などと適当なことを思いながら、水に手を触れてみるととても冷たくって。