ひろがる、ひろがる、ひろがれ

世界が違ってみえるわ。今日は世界が違ってみえる、今日は世界が違ってみえる日なのでいつもと違ったことをしてみる。いや、今日は違ってみえる日なので、いつもと同じことをしても違ってみえる。その方がお得かもしれない、違いがわかっていいかもしれない。

街へ繰り出す。街を歩くひとびと、いろいろなひとがいるけれど、いろいろなひとのいろいろな顔が今日は違ってみえる。眼鏡をかけたひと、眼鏡をかけていないひと。おじさん、おばさん、若いひと。お辞儀をするひと、本を読むひと、携帯電話を見てるひと、イヤホンをつけているひと。

公園に出かける。木々はいつもよりふさふさしてみえて、真っ赤な木の実たちがアクセサリーみたいにみえる。散歩をする犬も澄んだ空気を喜んでいるみたい、しゃんしゃんと鳴る鈴の音がいきもののように聞こえる。土の中では虫たちが、迫りゆく冬に備えて準備を始めている気がする。最後に秋を楽しむ虫たちはとても楽しそうにみえる。

あの人に会う。あの人の声が、いつもと違って耳に入ってくる。あの人の声が頭のなかを違う風にこだまして、いつもと違うはなしができる。あの人の目が、いつもと違ってわたしを見つめる。あの人の目に映るわたしも、いつもと違っているような気がする。あの人の体が、いつもと違ってみえて、まるでダンスを踊っているかのようにみえる。

いろいろ、いろいろ、いろいろなものが違ってみえた日に、いつもと同じことをしてみる。