せかいとことば

世界は言葉によってつくられているし世界は絶えず言葉を生み出しているし。雑多な文章をつらつらと。

小説

困難なほどに夏

ぼん、っていうか、どん、っていうかそのどちらでもないようなぼんやりとした振動音、耳を澄ますと聞こえなくなってしまう、気のせいかと思って目をそらすとまた微かに聞こえてくる音。夏になるとそんな音がどこからともなく聞こえてくるものであって、大抵…

「妄想赤ちゃん」第一回

家に帰ると赤ちゃんがいた。正確に言うと、家に帰ってジャージに着替えてソファに座り、ぼーっと部屋を眺めていると、その存在に気がついたのだった。それは赤ちゃんだった。小さくて、頬はぷくっとオレンジ色に膨れた、赤ちゃん。いつからここにいたのか、…

「わたしの可愛い小鳥」

ドラッグストアで買い物をしていた、葛根湯と、水出し緑茶など、そんなものを購入した。レジで会計をしていると、すこし先にポスターが見えた。「探しています」大きな文字が見えた。ああ、犬か猫でも、いなくなってしまったのかなあ。可哀想に。見つかると…

「世界のしくみがどうたらこうたら」

肌寒い日だった。肌寒い街で太鼓を叩いていた。寒いので歩きながら叩いていた。客引きのおねえさんに、頑張ってと言われて、お互い寒いねと励ましあったりした。客引きのおにいさんからは、すごいね、かっこいいね、頑張ってねと意味不明の賞賛をうけたりし…

「真っ白な雪の上にはカラスが」

「やっぱ、ポエティックに生きないとだめだよね、ポエティックに」 放課後、わたしは駅前のマクドナルドでマックシェイクをすすりながら、そんなことを言っていた。なぁーんて言ってる時点で所詮わたしはポエティックではないのだろうな。本当にポエティック…

「鮮明に」

よくわからない。よくわからない気持ちになる。こういうときはどうしたら良いのだろう。どうするべきなのだろう。みんなは、こういうときにどうしているのだろう。どういう方法が、あるのだろう。***ふと、むかしのことを思い出してしまった。ナガタさん…

「太陽の真下」

朝起きるとそこは太陽のちょうど真下の広場、みたいで、とっても眩しかった。カーテンを閉めるのを忘れて寝てしまったのだと気づいた。おかげでこんなに早く目が覚めてしまったのだけど、不思議と眠くはなかった。わたしは毎朝起きるとすぐ、CDをかけるよう…